介護を学んだ学生のその後
新人5人のリアルな実態を聞いてみた。
Gentle vol.4(2021年発行)で、介護を勉強する学生たちが、将来のことを語り合いました。
その後、実際に介護・福祉の仕事に就いた彼女たちと、
同じく座談会に参加した中島尚樹さん、井上恵津子さんが2年ぶりに集結。
学生時代の思いを振り返りながら、今の仕事のやりがいや悩み、介護・福祉現場のリアルな実態まで、語り合いました。
MEMBER
聞き手
中島 尚樹さん
井上 恵津子さん
話し手
Rさん安佐南区役所
厚生部 生活課広島文教大学 人間科学部
人間福祉学科卒
Sさん社会福祉法人
江能福祉会 特別養護老人ホーム江能広島国際医療福祉専門学校
人間総合福祉学科卒
Yさん社会福祉法人
IGL学園福祉会
特別養護老人ホーム IGLナーシングホーム信愛の郷IGL医療福祉専門学校
介護福祉学科卒
Tさん社会福祉法人
FIG福祉会
老人保健施設チェリーゴード広島国際大学医療福祉学部(現:健康科学部)
医療福祉学科卒
Aさん社会福祉法人 和楽会
特別養護老人ホーム和楽荘トリニティカレッジ広島医療福祉専門学校 介護福祉学科卒
夢は叶った?今のお仕事について教えて
まず、2021年にお集まりいただいた5人の方全員に、またお会いできたことが嬉しいです。
その時話されていた夢が叶ったのかどうかなども含め、同窓会のようにざっくばらんにお話をお聞きしたいと思います。
みなさん全員が福祉や介護の関係のお仕事に就かれたんですよね。それにまず感動しています。
それでは順番にどんなお仕事を就かれたのかお聞かせいただけますか。
私は昨年就職して、特別養護老人ホーム(以下特養)で介護職として働いています。
学生の時から特養で働きたいと思っていたので、夢が叶ったという感じですね。
この春就職したばかりで、社会人4か月になりました。特別養護老人ホームで働いています。
学生時代は実習などの経験から、小規模多機能施設とかを希望していたのですが…。
なかなか希望していた施設が見つからなくて、結局、先生からの紹介で広島市の福祉職の採用試験を受け、今はケースワーカーとして働いています。2年目です。
私も2年目で、特別養護老人ホームで介護職員として働いています。今は乗り越えたんですけど、1年目は凄い、波乱の1年でした。
「波乱」かぁ…それは気になるね。あとでじっくり聞かせてもらおう。
では続けて、Tさんは?
私は老人保健施設でリハビリを担当しています。
実は当初の希望は特養だったんですが…でも今の職場が一番楽しい!と思っています。
もう笑みがこぼれまくってますね(笑)。じゃ、Tさんから詳しくお聞きしますね。
私の職場では入職前から先輩との相性や本人の性格などを加味して、配属を決めているそうで・・・、入職後の配属先がリハビリ中心の老健だったんです。
リハビリは身体を動かすことができる元気な利用者が多いイメージで、私があまり手を出さないというか、見守る感じなのかな~と思っていたんです。
でも、それは違っていました!体に触れる介護技術だけでなく、私の声かけひとつで利用者のモチベーションが上がるんです。
「できないかもしれないけど、やってみよう」とか、「これも自分でできるんだ」とか、日々前向きに変わっていくのを目の前で感じられて、とても楽しいです。
わかりやすく反応があるんだね。
はい!「あなたの言葉があったから、私はできるようになったよ。ありがとう」と言ってもらったりして。配属先について職場の方の見る目に今はとても感謝していますね(笑)。
仕事はやはり大変?
抱える悩みの解決策を教えて
ではAさん、「波乱の1年」についてお聞きしましょうか。
入職してから半年くらいは本当に楽しく働いていたんです。日勤帯のみの就業だったので、何かあっても、自分の他にも常に上司や先輩がいて、心強い状況でした。それが、夜勤がはじまったら、昼間担当していたユニット(10人)にプラス、ほかのユニットを合わせて20人を一人で担当することになったんです。しかも、新しく担当することになったユニットに結構個性的な方がいらっしゃって…。ナースコールが3つ同時に鳴ったりした時は、もう恐怖しかなかったです。夜勤の間は座る暇がないくらい、忙しかったと思います。
お世話になった学生時代の先生に「自分に向いてない、辞めたい」と電話したこともありました。
でも今もしっかり続けていらっしゃる。どうやって乗り越えたの?
夜勤の大変さについて頭では想像はしていたのですが、それよりもはるかに辛かったです。自分ひとりしかいないと、自分で自分を追い詰めてもいました。
心細いのもあって、別の階にいる先輩に内線電話で相談したり、別ユニットの職員に利用者さんの性格や特徴を教えてもらったり、とにかく聞きまくりました!それで利用者一人ひとりの状況を書いたオリジナルのメモをつくって、事前に対応できるようにしていったら、今は夜勤の間にも座って一息つけるようになりました。学校の先生からは「あの時辞めなくてよかったね」と言われています(笑)。
辞める人が出ると、続けて「私も…」と連鎖していくこともあって…。気にかけあって、辞めたい人を減らすこと自体が、離職を減らすことに繋がっていると思います。
そうですよね。人手不足は感じます。離職があると、他の担当者が応援に入らないといけなくなるので、頼りづらくなったり…。1人ひとりのやることが増えて、仕事つらい…となりますよね。悪循環です。
仕事のやりがいや魅力、今後の夢を聞かせて
辞めたいとか辛いとか、やっぱり悩むことはあるよね。先輩に相談したり、自分で行動して乗り越えてきたことがわかるね。 あらためて、仕事のやりがいや魅力って何だろう?
私はケースワーカーなので、法律の範囲内で「できること」「できないこと」を伝えないといけません。時には辛いこともありますが、しっかりお話を聴くことに努めています。あまり「ありがとう」と言ってもらえる仕事ではないですが、担当した女性の方が、「今まで誰にも話したことが無かったんだけど…」と悩みを打ち明けてくれたことがあって…。その時は、私だから話してくれたのかな、と思いました。
やっぱり利用者さんに「ありがとう」って言われたり、笑顔が見れたときは、「頑張ってよかった」って思います。あと、私からも言うようにしています。お風呂とか、利用者は全部をさらけ出して介護者に身を預けてくれているので。終わった後に、「ありがとうございました、お疲れ様でした」って伝えるようにしてます。そうすると、「今日もやってくれてありがとう」って返してくださったりして…。
私に任せてくれてありがとうって伝えるんだね。
ほんま「ありがとう」って言おう。ちょっと今、利用者さん側の目線になってる(笑)。
私は辞めたいと思ったことが全然なくて。本当に今の職場が優しい人ばかりで、新人の私を助けてくれます。 わからないことも聞きやすいし、夜勤も2人体制なので、安心して仕事ができています。温かい先輩たちに感謝ですね。
先輩に「Tさんしかできない声掛けができるようになったね」って言ってもらったこととか、最初は「お前じゃない、他の人(先輩)を呼べ」って相手にしてくれなかった利用者さんが、「お、今日はTさんか、頼むよ」って笑顔で接してくれるようなったこととか・・・やっぱり嬉しいです。「わたし、必要とされてる!」ってモチベーションも上がります。
さすが社会人って感じで、名言がいっぱいですね。
ところで将来の夢とか、あらためてお聞きしたいです。
あらためて責任感をしっかり持って仕事をしていきたいです。その人の最後の最期を私だけが聞いたりする可能性もある、特別な仕事だと思います。
あとは、忙しくて利用者さんとお話する時間が満足に取れなかったりすることもあって。まずはしっかりと自分が仕事をできるようになって、余裕をもって一人一人の気持ちを聞けるようになりたいです。
入職して4か月なんですけど、やっぱり最初の3か月はきつかったです。今はそれを乗り越えた感じなんですけど、何事もあきらめちゃダメだなって思います。失敗が続いたら「私じゃダメなのかな」って思うこともあるし、成功した時は「頑張れるかも」って思います。日々、一つ一つ丁寧に。「あきらめずに頑張る」ことが私の目標です。
「介護職はどんな時も冷静にできる、神様みたいな人がやる仕事なんだ、自分には無理だ」って落ち込んだ時期があったんですけど、考えを変える出来事がありました。ある利用者さんの看取りをしたとき、すごい悲しくて、施設に来られたご家族の前でも号泣してしまって…。「家族の心のケアも介護職がしなきゃいけないのに、何もできなかった」って思っていたら、後日ご家族の方から「Aさんっていい子が、泣いてくれて、最後の1年すごく良くしてくれたみたいで、本当に良かった」って言われたよ、と上司から聞いて…。利用者さんが一人ひとり違うように、いろんな介護職員がいていいんだって思えるようになりました。
1年目ではわからなかったことが2年目になってわかってきたり、ユニットの利用者さんとはお馴染みのメンバーになって、絆が深まっていたり。そういう積み重ねを楽しみに、3年・4年と続けていけたらと思います。
これから進路を考える皆さんへ…
最後に、これから就職や進学を控えている方へのメッセージをもらえますか。
私は学生時代にやりたいことがわからなくて…。でも、今やりたいことがわからなくても大丈夫と伝えたいです。
やってみてしんどかったら辞めるのはいいと思うし、学校での勉強や人との関わり方を通じて、わかってくることもあると思います。人に相談したり、頼ってみてください。
好きな仕事をしていても、些細なことで落ち込んだり、悩んだりすることもあると思います。そういう時は一人で悩まず、同級生や先生、友達に話しを聞いてもらってストレスを溜めないようにしてもらえれば。
私も不安なことは、小さなことでもすぐに上司に聞くようにしていて、それで安心して仕事が出来ています。
「介護」は人と人との関わりだと思います。自分も余裕がないときは笑顔もなく、険しい顔で利用者に接していたと思います。「正しい介護をしなきゃ」と構えすぎずに、「この人はどんな人かな、どんな人生を送ってきたのかな」とか、相手に興味をもって積極的にコミュニケーションをとることを大切にしてもらいたいですね。喧嘩もするし、色々あるのは、普通の人間関係でも介護でも一緒だなって思います。
皆さん、今日はありがとうございました。
2年ぶりにお会いして、とにかく感じたのは責任感をもった顔というか、カッコいい!
ほんと、将来、皆さんのような方にぜひ担当してもらいたいと思いました(笑)。
ぜひ3年・5年後そして10年後、またお会いしましょう。
編集後記
座談会の後、撮影の合間にプライベートの話題について聞きだしていた中島さんと井上さん。
オフの日にはまっている趣味や恋バナにも花が咲きました。
仕事だけでなくプライベートも充実している様です。
広島県福祉・介護人材確保等総合支援協議会
【事務局】 〒732-0816 広島市南区比治山本町12-2
社会福祉法人 広島県社会福祉協議会
TEL:082-254-3415